登場人物・専門用語

※カッコ内は源氏名

・天野信(菊野/深雪):1999.1生まれ。
玉東唯一の女子禁制の高級クラブ、白銀楼の看板傾城。
「底なし沼」の異名を取り、一度はまったら抜けられなくなる魔性の男。
章介、一樹の親友で本作の主人公。身長160cm→173cm。

・秋二・ジョン・アンダーソン/若本・ジョン・秋二(立花(りっか)):2006.8生まれ。白銀楼の傾城で、信の元部屋付き禿。
明るく天真爛漫で意志が強い。日本人の父と米国人の母を持つハーフ。
章介と信に可愛がられている。身長158cm→173cm。

・鶴見章介(紅妃(こうひ)):白銀楼の傾城で信の友人。信と同い年。
忍耐強く、寡黙な男前。人のことを悪く言わない性格。
登山と将棋が趣味。身長175cm→185cm。

・湯田一樹(椿):白銀楼の売れっ子傾城。小柄な美少年。信と章介の友人で同い年。明るくカリスマ性がある、同世代のリーダー的存在である。身長158cm。

・有間環(珠生(たまき)):美少女然とした売れっ子傾城。
信と章介と一樹の兄貴分。見た目に反し男前で度量が広い。
常にお職争いに加わっている。身長160cm。
・内藤優(小町):白銀楼の傾城で環の同期。人をからかうのが好きな愉快犯。
・津田秀隆(紫蘭):信を目の敵にしている売れっ子傾城。信の二歳上。
日舞が得意な、容姿端麗な青年。幼なじみの綾人と共に白銀楼にやってきた。
計算高く、立ち回りがうまい。プライドも高い。綾人だけが弱点。
・広尾綾人(あやめ):津田の幼馴染みで同期。人当たりが良く芯がしっかりしている。
・朝比奈(柚子):津田、広尾の友人。・伊沢尚之(涼(すず)):古株の番頭新造。小竹の右腕というか犬。
・寺島純(雪乃):信の初めての禿。引っ込み禿。
・佐藤敦也(瑠璃):図抜けた美貌を持つ白銀楼の傾城。信の元部屋付き禿。笑わないことで有名。信を慕っている。通称「氷の瑠璃」。
・菅野夏樹(春名)、近藤伊織(千秋):信の部屋付き禿。
・長浜大輔(吉野):ムードメーカーで情報通の信の友人。
・寺島純(雪乃):信の初めての禿。引っ込み禿。
・雅、百合:白銀楼の禿。信落籍後に店に入る。
・美月:白銀楼の売れっ子傾城。信落籍後のお職。

・小竹博:白銀楼の遣り手。店主に雇われ店を回す支配人。
・柿崎友也:白銀楼の常勤医。
・佐竹瑞貴:章介の馴染み客。小動物然とした大学生。
旧財閥系の大企業を経営する一族の御曹司で、学生にしてビジネスを立ち上げ、成功している。白銀楼常連の司の甥である。
・佐竹司:瑞貴の叔父で環の馴染み。古くからの常連客。
・千田:信の馴染み客。
・畠山浩二:信の馴染み客。大富豪だがサディストで、多くの傾城に敬遠されている。香港マフィアの幹部。信が中学生のときに出会っており、心底惚れている。が、愛情表現が下手で、相手を信じきれないがゆえに傷つけてしまう。
・小岩雅貴:信の馴染み客。容姿端麗なエリート紳士。信に本気になるがのち事件を起こす。
一樹の実の叔父。外資系企業勤務でシェイクスピアがお気に入り。
傾城仲間の中で王子と呼ばれ、品と教養を兼ね備える上客。しかし、信には嫌われている。

・木村世羅:信の友人。玉東区内の中見世の傾城(女性)。気さくな性格で本の虫。区内の「図書館」によく足を運んでいる。
・氷川由美(なずな):白銀楼の斜向かいにある大見世、紅霞楼の花魁。信の二歳上。したたかで計算高いが心根が綺麗な女性。信を気に入っている。
・藤原 浩二の主治医


・東京玉東(ぎょくとう):二十世紀末に、東京郊外に造られた観光街。江戸吉原を模した花街風の街であり、あくまで売買春の伴わないサービスを提供するというていだが、実際には違法な風俗店も多く存在する。白銀楼もその店のうちの一つ。
・白銀楼(はくぎんろう):玉東で唯一女子禁制の大見世。傾城の花魁道中は月一回。紅霞通りにある。
・紅霞楼(こうかろう):白銀楼の斜向かいにある老舗の大見世。いるのは女性の傾城のみ。
・大見世(おおみせ):玉東の中で最も格式が高い店の総称。あがるには莫大な費用が必要。全部で九軒ある。
・中見世(なかみせ):大見世に次ぐ高級クラブ。区内に三十軒ほど。
・小見世(こみせ):大衆的な店。五十~六十軒ある。
・河岸見世(かしみせ):吉原で最下層の見世を指したのと同様、玉東においても底辺の店の総称。揚げ代が最も安価。
衛生状態が悪く、薬物が蔓延し、セーフセックスも徹底されていない。
一度入れば生きて再び出られないとされる。
・地下:河岸の中でも身体を傷つけるようなマニアックなプレイを客に提供する非合法の店の総称。一度入ったら五体満足では出られないとされる。
・引手茶屋(ひきてぢゃや):客を各店へと案内する茶屋のこと。

・傾城(けいせい):店で客を取るようになった者のこと。水揚げを経て一本立ちするとこう呼ばれる。
白銀楼においては、上から、
新造付(しんぞうつ)き呼び出し
昼三(ちゅうさん)
付廻(つけまわし)
部屋持(へやもち)
となっている。

・お職(しょく):その月の売り上げトップの傾城のこと。(揚げ代、飲食費、遊興費の総額)
・禿(かむろ):傾城の身の回りの世話や店の雑用などをする見習いのこと。この期間に教養・芸事などを学ぶ。白銀楼では通例一年。
・引っ込み禿(ひっこみかむろ):器量や才に恵まれるとみなされ、お職候補として手塩にかけて育てられる禿のこと。
・部屋付き制度:禿がそれぞれ先輩傾城のひとりにつき、身の回りの世話をしながら修業すること。
・新造(しんぞう):修業期間を終え、傾城について接客を学ぶようになった見習い傾城のこと。傾城の代わりに客の相手をすることがあるが、建前上は床入りしないことになっている。白銀楼では、修業期間は通常一~二年。
・振袖新造(ふりそでしんぞう):通常引っ込み禿がなる。
・番頭新造(ばんとうしんぞう):本来は傾城の世話役を指したが、本作では遣(や)り手の右腕として店を統括する役職となっている。通常、元傾城がなる。
・新造出し:修業期間を終えた禿が新造になる際、お披露目を行うこと。
・お茶挽(ちゃひ)き:客が付かないこと、また人気のない傾城のこと。
・花魁(おいらん):番付上位の傾城のこと。白銀楼では付廻までが花魁。
多くの禿や新造を抱えることができる。
・遣(や)り手:楼主の指示に従って店を回す支配人のこと。
・若衆(わかしゅ):店の用心棒兼雑用をこなす使用人。
・間夫(まぶ):傾城の本命の恋人。

・馴染み制度:白銀楼では三回傾城のもとに通うと馴染み客として認められる。
一回目は「初会」といい、客は芸者や幇間(ほうかん)などを呼んで宴席を設けるが、傾城は一言も口を利かず、床入りも許さずに客を帰す。
二回目は「裏」といい、二度目に登楼(とうろう)することを「裏を返す」という。ここでもやはり床入りはできない。
そして三回目で馴染みの儀式をし、専用箸を渡される。 
白銀楼では一見の客が揚げることができるのは付廻以下の傾城のみであり、それ以上の傾城を揚げる場合にはこの儀式が必要である。
儀式の途中で傾城側が客を拒否することもある。

・敵娼(あいかた):馴染み客の相手役を務める傾城のこと。吉原などでは基本的に敵娼を変えることは認められなかったが、白銀楼では認められている。
・登楼(とうろう)/登楼(あが)る:客が来店すること。
・水揚(みずあ)げ:傾城が初めて客を取ること。
・共(とも)揚(あ)げ:敵娼を含め二人以上の傾城を敵娼の本部屋にあげること。(白銀楼での呼称。当作品オリジナル)
・落籍:客、あるいは傾城本人が所定の落籍料を店に支払い、店を辞めること。
・身揚(みあ)がり:傾城が自分で自分の花代/揚げ代を払うこと。
・花代/玉代/揚げ代:傾城を呼んで遊ぶ時にかかる代金。
・花魁道中:花魁が引手茶屋から連絡を受けて客を迎えに、禿や新造を引き連れて通りを練り歩くこと。
・足抜け:契約を反故にし、店から逃げだすこと。
・名代:新造が傾城に代わって客の酒の相手をすること。
・流連(いつづけ):客が店に連泊すること。
・張り見世:店の入り口付近に設けられた、籬(まがき)(格子)で仕切られたスペース。傾城が客に品定めされる場所のこと。座敷のスペースに傾城たちが並び、選ばれるのを待つ。
・仕掛(しか)け:傾城が着る色打掛(いろうちかけ)のこと。通常は柄物のきらびやかな友禅などを羽織る。