登場人物

・天野信/シン・ハタケヤマ/菊野/芦屋新(22→33)
玉東の女子禁制のハイクラブ・白銀楼でトップを張っていた男性の傾城。
比類なき美しさと懐の深さで男も女も魅了する魔性の男。早くに母を亡くす。白銀楼の五代目菊野である。
玉東を出たのちは与党重鎮の古賀道義の寵を受け、議員となる。

・マウリ・バルドーニ(26)
ナポリを拠点とするイタリアンマフィア、バルドーニファミリーの後継者候補の一人。ドンの末弟の一人息子。二十代半ばの金髪碧眼の美青年。
多重人格であり、主人格のマウリの他に子供人格と攻撃的な人格がいる。
ファミリーの後継者争いをしている二つの派閥のうちルカ派である。
◇サムエーレ:マウリの交代人格。六歳。基本無害で人懐っこい。
◇ラザロ:マウリの交代人格。攻撃的な殺人狂。

・森翔太郎
信を白銀楼から落籍した大富豪。信を政治家にしようと画策する。

・古賀道義
与党の大物政治家。信の元客であり、信を寵愛する。

・長谷佑磨
元キャリア官僚の森の愛人。森と共に信を議員へと押し上げる。

・秋津隆之(31)
信の家庭教師。性格が秋二によく似ている。

・鶴見章介/紅妃(22→33)
白銀楼の傾城で信の親友。長身短髪の武士然とした美丈夫。瑞貴の恋人。

・佐竹瑞貴
旧財閥系大企業を経営する一族の御曹司。小柄で小動物然としている。
かつて章介の馴染み客だった。

・穂波誠一
章介の元客の優男。章介に執着し、拉致監禁する。

・畠山浩二
香港マフィア・九龍(クロン)幹部の日本人。信の元馴染み客。

・進藤司
信の幼馴染みで初めて付き合った相手。

・荒川右京、篠宮秀嗣
信の幼なじみ。

【バルドーニファミリー、他】 ※第四章〜

・ネロ・バルドーニ(ドン・ネロ)
ナポリを治めるマフィア、バルドーニファミリーのドン。マウリの叔父。

・ルカ・バルドーニ(35)
ネロの長男でマウリの従兄弟。ルカ派を率いる。

・フェデリコ・バルドーニ
ルカの弟。

・アロンツォ・バルドーニ
ルカの末弟。

・ガリレオ・バルドーニ
ネロの弟。

・アウグスト・バルドーニ
ガリレオの長男。アウグスト派のトップ。ルカと敵対。

・ロマーノ・バルドーニ
ネロの末の弟。マウリの義父。慈善家。

・エリア
ロマーノの護衛。

・アルトゥーロ・コンティ(アル)(36)
ロマーノの護衛。マウリの世話係。

・ジョルジョ・コンティ
アルの父。代々ファミリーに仕える職人。

・ドメニコ・コンティ
アルの曾曾祖父。指輪を隠した。

・カレルリ伯爵
ナポリの名士。保守党幹部。

・ヴェーラ、アッバーテ
与党のナポリ市議会議員。バルドーニファミリーと協力関係にある。

・カヌーティ
ナポリ署署長。

・ベネッリ医師
マウリの担当医。精神科医。

・パウロ、ロドリゴ
マウリの部下。二十代半ば。

・アレッサンドロ、マテオ
マウリの部下。

・クリスチアーノ
ルカの部下。パウロ、ロドリゴと仲が良い。三十手前。

・ラガーウィン
自由革命同盟の構成員。

・ブラックスミス
バルドーニファミリーイギリス支部代表。ドンの遠縁で元軍人。五十半ば、頑固者。

・リカルド・バルドーニ
ルカの曾曾祖父。早逝。

・ファウスト・バルドーニ
ルカの曾祖父。

・クラウディオ・バルドーニ
ルカの祖父。ネロの父。

・ラファエロ
マウリの曾曾祖父。

・フランチェスコ
マウリの曾祖父。

・ソフィア
フランチェスコの妻。マウリの曾祖母。

・ジュゼッペ
フランチェスコの次男。マウリの祖父。

・リコ
ジュゼッペの息子でマウリの実父。マウリが二歳の時に死亡。

・ダヴィデ
リコの兄。マウリの実の叔父。

・マリア
マウリの実母。マウリが二歳の時に死亡。

【ローマのバルドーニファミリー】 ※ネタバレ。第六章三話まで読んでからお読みください。







<リコとその姉弟>

・リコ・バルドーニ(〜27)
マウリの実父。故人。マウリが二歳の時に襲撃により死亡。内部犯か外部犯かはわからず。
末っ子。性格は穏やかで平和主義。
二十五でマウリを授かる。

・ヴィオラ・バルドーニ(〜43)
リコの一番上の姉。故人。病気で死亡。

・ダヴィデ・バルドーニ(〜55)
リコの兄。故人。約二年前、ファミリー内部の裏切り者により暗殺される。

・カミラ・バルドーニ(54)
リコの二番目の姉でマウリの叔母。背が高く金髪碧眼。ドンの名代をしていた。現在は顧問(コンシリエーレ)。子供はいない。

(生まれ順 ヴィオラ>1歳差>ダヴィデ>3>カミラ>4>リコ)

・・・

・フィリッポ・ロッシ
ファミリー顧問。太った赤ら顔の男。五十代。野心家。ファミリーで実権を握っている。ヴィオラの元夫。

・ビアンカ・ロッシ
フィリッポの後妻。三十過ぎ。

・マヌエル・ベルニーニ
ロッシの部下。内通者。

・ニコロ・ボルガッティ
アンダーボス。眼鏡の老人。

・ジュリア・ボルガッティ
ニコロの妻。ビアンカと対立。気の強い美人。

・シモーネ・アガッツィ
カポ、幹部。色白の中年男。

・サーラ・アガッツィ
シモーネの妻。三十代。ビアンカの親友。

・アレッシオ・ブルーノ
カポ、幹部。生気のない馬面の男。

・マルティーナ・ブルーノ
アレッシオの妻。出世欲がない。茶髪で巻き毛。よく編み物をしている。

・エマヌエーレ・フェラーリ
カポ、幹部。二十代の茶髪の男。

・エンマ・フェラーリ
エマヌエーレの妻。上昇志向。

・アリーチェ・ガッロ
カポ、ボニート・ガッロの妻。ビアンカ、サーラと仲が良い。

専門用語

・東京玉東:二十世紀後半に、東京郊外の山間部に造られた観光街。江戸吉原を模した花街風の街である。
 ・白銀楼:玉東で唯一女子禁制のハイクラブ。傾城の花魁道中は月一回。紅霞通りにある。 
・大見世:玉東の中で最も格式が高い店の総称。あがるには莫大な費用が必要。
・河岸見世:吉原で最下層の見世を指したのと同様、玉東においても底辺の店の総称。揚げ代が最も安価。 衛生状態が悪く、薬物が蔓延し、セーフセックスも徹底されていない。 一度入れば生きて再び出られないとされる。

 ・傾城(けいせい): 店で客を取るようになった者のこと。水揚げを経て一本立ちするとこう呼ばれる。 
白銀楼においては、上から、 
新造付き呼び出し、昼三(ちゅうさん)、付廻(つけまわし)、部屋持 (へやもち)
となっている。
 ・お職(しょく): その月の売り上げトップの傾城のこと。(揚げ代、飲食費、遊興費の総額) 
・禿(かむろ): 傾城の身の回りの世話や店の雑用などをする見習いのこと。この期間に教養・芸事などを学ぶ。白銀楼では通例一年。 
・引っ込み禿:器量や才に恵まれるとみなされ、お職候補として手塩にかけて育てられる禿のこと。 
・部屋付き制度:禿がそれぞれ先輩傾城のひとりにつき、身の回りの世話をしながら修業すること。 
・新造(しんぞう): 修業期間を終え、傾城について接客を学ぶようになった見習い傾城のこと。傾城の代わりに客の相手をすることがあるが、建前上は床入りしないことになっている。白銀楼では通常一〜二年。 
・振袖新造:通常引っ込み禿がなる。
 ・番頭新造(ばんとうしんぞう): 本来は傾城の世話役を指したが、本作では遣り手の右腕として店を統括する役職となっている。通常、元傾城がなる。 
・新造出し:修業期間を終えた禿が新造になる際、お披露目を行うこと。 
・お茶挽き:客が付かないこと、また人気のない傾城のこと。 
・花魁:番付上位の傾城のこと。白銀楼では付廻までが花魁。 多くの禿や新造を抱えることができる。
 ・遣り手(やりて): 楼主の指示に従って店を回す支配人のこと。 
・若衆(わかしゅ): 店の用心棒兼傾城の監視役。その筋の者が多い。

 ・馴染み制度:白銀楼では三回傾城のもとに通うと馴染み客として認められる。 (座敷に上がれるようになる)
一回目は「初会」といい、客は芸者や幇間などを呼んで宴席を設けるが、傾城は一言も口を利かず、床入りも許さずに客を帰す。 
二回目は「裏」といい、二度目に登楼することを「裏を返す」という。ここでもやはり床入りはできない。 
そして三回目で馴染みの儀式をし、専用箸を渡される。 白銀楼では一見の客が揚げることができるのは付廻以下の傾城のみであり、それ以上の傾城を揚げる場合にはこの儀式が必要である。 儀式の途中で傾城側が客を拒否することもある。 

・敵娼(あいかた): 馴染み客の相手役を務める傾城のこと。吉原などでは基本的に敵娼を変えることは認められなかったが、白銀楼では認められている。
 ・登楼(とうろう)/登楼る(あがる): 客が来店すること。
 ・水揚げ:傾城が初めて客を取ること。 
・共揚げ(ともあげ): 敵娼を含め二人以上の傾城を敵娼の本部屋にあげること。(白銀楼での呼称。当作品オリジナル)
 ・落籍:客、あるいは傾城本人が所定の落籍料を店に支払い、店を辞めること。 
・身揚がり:傾城が自分で自分の花代/揚げ代を払うこと。 
・花代/玉代/揚げ代:傾城を呼んで遊ぶ時にかかる代金。
 ・花魁道中:花魁が引手茶屋から連絡を受けて客を迎えに、禿や新造を引き連れて通りを練り歩くこと。
 ・足抜け:契約を反故にし、店から逃げだすこと。 
・名代:新造が傾城に代わって客の酒の相手をすること。 
・流連(いつづけ): 客が店に連泊すること。
 ・張り見世:店の入り口付近に設けられた、籬(格子)で仕切られたスペース。傾城が客に品定めされる場所のこと。座敷のスペースに傾城たちが並び、選ばれるのを待つ。 
・仕掛け:傾城が着る色打掛のこと。通常は柄物のきらびやかな友禅などを羽織る。